皆様はドッグビヘイビアリストという職業の方をご存知でしょうか?
日本ではまだあまり耳にする事がないと思いますが、
ドッグビヘイビアリストとは...
『動物行動学・認知行動学・心理学などの学説を用いて犬の行動をカウンセリングし、犬の主張を汲み取ります。
そしてその犬の主張を飼主さまにお伝えし、行動を好ましい方向へと導きます。
また、ドッグトレーニングでは欧米などで確立された手法で行い、重度の問題行動がある場合には認知行動療法も取り入れて行動を修正します。
ビヘイビアリストは犬にしつけをする前に、犬に最適な環境を与えることを重要視します。』
(Healthy Dog Ownership DOGBEHAVIOURISTより)
そしてこの度、日本で唯一ドッグビヘイビアリストの認定を受けられ、約1000頭ものワンちゃんをカウンセリングされた田中雅織さんにインタビューをさせていただきました!
お忙しい中大変内容の濃いお話を聞かせていただきましたので、2回に分けてお送り致します。
本日は第一弾です!😊
ドッグビヘイビアリストとは分かりやすく言うと、どのような仕事ですか?
心理療法の専門家で、問題行動の修正が主な仕事です。飼い主さんを含めワンちゃんの心理カウンセラーのような存在です。
ドッグトレーナーとの違いは何でしょうか?
まずトレーナーでなければビヘイビアリストになる事はできないのですが、簡単に言うとドッグトレーナーは犬に動作を教えるのが仕事でドッグビヘイビアリストは既に問題になっている行動を直すのが仕事です。
元々、ビヘイビアリスト(behaviourist)とはイギリスから来ている言葉で動物行動学者、心理学者、精神科医の事を指します。
今まで、何匹のワンちゃんと関わってこられましたか?
はっきり数えた事はありませんが、約1000頭弱だと思います。
ドッグトレーナーではなくドッグビヘイビアリストに相談に来られる方はどのような悩み、背景のある方が多いのでしょうか?
うちにいらっしゃる方はセカンドオピニオンで来る方が多いのですが、やはり相談でよくあるのは飼い主さんを襲ってしまうだとか、分離不安について悩んでいらっしゃるという件についてですね。
またトレーナーや訓練士は厳しすぎるというイメージから、心理学の方にお願いしたいという飼い主さんが多いです。
今までに携わったワンちゃんの中で印象に残っているストーリーはありますか?
そうですね、当時既に8〜9歳くらいの甲斐犬で、犬でも人間でも誰でも襲って殺そうとしてしまう子の事が印象に残っています。
元々保健所にいたのでなぜそうなってしまったのか原因は分からないのですが、私が保護し、半年くらいかけて治療をしてから飼い主さんを探す所までをしました。
今の日本のしつけの現状についての問題意識はありますか?
はい、あります。
良く耳にする心理を無視したしつけ(例えば『なにか問題行動をしている時に驚かしてやめさせるというしつけ方法』や、『〜しなければなぐる』というような方法)は良くありません。
もとから何かに不安で問題行動を起こしてしまっている所に更に不安要素で蓋をするという事になるからです。
それで悪循環を生んでしまい保健所に送られるというパターンがあり、私はそれをなるべく減らしたいと思っています。
問題行動を引き起こしてしまう主な原因は何でしょうか?
まず子犬の時期に社会化ができていない事が挙げられます。
実は第一社会化期は出生後3ヶ月が終わるまでなので本当は100人100頭と関わるべきなのですが、獣医学上ワクチンが終わっていないので外に出してはいけないと言われてしまう現状があります。
日本とアメリカはペット後進国と思っているのですが、ペット先進国と言われているヨーロッパでは社会化は心のワクチンと言われていて、将来の問題行動を防ぐ為には飼い主の責任と判断で子犬を社会化させるべきと言われています。
ですのでヨーロッパではブリーダー、トレーナー、獣医、ビヘイビアリストもしっかりと管理した上で社会化を進めましょうと推奨しているのですが、日本では外に出さないようにと言われていて、そこに問題があると思います。
次に、生活環境に問題がある事が多いです。
サークルに閉じ込めておく、散歩にあまり連れて行かない、コミュニケーションがあまり取れていないなど、犬にストレスをためさせる生活をしている場合、社会化できていても問題行動に繋がってしまいます。
飼い主さんは犬の特性、習性を知り適切な生活環境を作ってあげる必要があるのですが、正しい情報が周知されていないという問題があります。
また日本では8週齢規制がまだ甘く、ペットショップでは生まれてすぐに母親から離されてしまう事が多いのですが、親兄弟との関わりも社会化の一部ですのでこの点も社会化不足の問題に挙げられると思います。
ひとりぼっちのお留守番が与える犬への影響は何でしょうか?
率直に言うと、犬はまずお留守番が本当は無理で1人では生きていけない生き物です。
元々は群れで生活する動物なので個では弱く、1人だと本能的に不安になってしまうのです。
欧州では5時間以上のお留守番は違法で、最終的には犬を取り上げられるというところまで厳しくされています。
なぜなら長時間のお留守番は犬にストレスがかかり、それが続くと無駄吠えなどにつながり悪影響になるからという考えが浸透しているからです。
日本人は長時間働くのでお留守番の時間も他国よりも圧倒的に長いのですが、それにも関わらず、犬がそもそもお留守番が苦手である事が認知されていないのが問題と言えると思います。
そうはいっても現実問題としてお留守番は日本で働いている限り必須なので、ストレス強度を高めて徐々に慣らせてあげることが必要です。
慣らせてあげる事で犬は克服できます。
ただ何もしないでお留守番させようとすると分離不安に繋がってしまうという事を覚えておいていただきたいです。
犬種によってひとりぼっちになるストレス具合は違いますか?
そうですね、犬種による違いは確かにあります。
有名なのはジャーマンシェパードで、生まれつきの分離不安を持っています。
訓練性能が高いので、その分訓練するハンドラーとの結びつきが強く依存しやすいのです。
ですので言い換えますと、訓練しやすい犬は分離不安になりやすい傾向にありますね。
ワンちゃんの喜怒哀楽を読み取るサインはありますか?
それは体全体のボディーランゲージから感じるものです。
しっかりとコミュニケーションをとってなるべく一緒にいてあげて細かい変化に気づいて
あげる事が重要です。
今回はワンちゃんの性質やお留守番による負担についてお話してきましたが、次回6/16予定の第二弾インタビューブログでは、そういったワンちゃんの特徴を理解した上で飼い主さんが愛犬のためにどのような姿勢で、何ができるのかについての田中さんのアドバイスをご紹介させていただきます!
乞うご期待ください!🐶 ✨
田中さんは既に2冊の本を執筆されています(『散歩でマスターする犬のしつけ術: 愛犬とより強い絆を築くために』、『失敗しない犬の選び方-How to Choose Your Dog-』)が、犬とのコミュニケーション法について書かれた第三作が出版されるそうです!
📘 次作の本について田中さんからコメント
私は、中型犬〜大型犬の5頭の仲間たちと暮らしています。
この仲間達には、時より保護犬や仕事でお預かりする犬が参加することもあります。
日々、彼らの行動を観察をしていると、如何に巧みにコミュニケーションをしているかがわかります。
お互いの感情も、実によく感じ取っているのがわかります。
互いの信頼関係がどのように構築されていくのか、または崩壊していくのかも見て取れます。
昨今、犬の認知能力については盛んに研究が行われています。
3作目となる次作の書籍では、彼らのコミュニケーション術から会話の方法を学び、最新の科学研究からもヒントを得て、人と犬の会話の質を高め、絆を強くする方法をご提案します。ご期待ください。
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